アルプスの山々に抱かれたチロル地方の民俗舞曲を思わせる、明るく軽やかな小品です。チロルといえばチロリアンハット(チロル帽)と独特の民族衣装。広々とした高原の牧草地で踊る人々の姿が目に浮かびます。「チロルチョコ」の名前の由来ともいわれています。アルプスといえばスイスを連想しがちですが、チロル地方はオーストリアとイタリアにまたがるアルプス東側の地域。山々に囲まれた谷沿いの集落で独自の文化が発展しました。
作曲者ジョセフ・ルンメル(1818-1880)はドイツ生まれの作曲家・ピアニスト。父、息子、孫まで音楽家という一家で、パリやロンドンで活躍し、500曲以上を残しました。
構成は2小節の前奏に続き、ハ長調(A)・ト長調(B)・ヘ長調(C)によるA-B-A-C-A-B-Aのロンド形式。主部のリズムは「タタタッタ」と民族色が強く、中間部(ヘ長調)は典型的なティロリアンヌの雰囲気です。旋律にはアルプス名物のヨーデルの気分が漂います。演奏は「軽さ」が命。右手は指先の反発で軽やかに弾き、跳躍部分は腕ごと移動して明るい音色で。左手は元気すぎると主役を食うので、1拍目だけ少し支え、あとはmp以下で薄く。ペダルは小節頭だけ浅く短く踏み、すぐ離すのがコツです。